旧城下町の和菓子屋にて

 今自分の住むこの街のある一部の地区は、江戸時代に小さい?城下町だったらしく和菓子屋が多い。ただ城下町であったが故に道が細く、車社会になった現代においては非常に行きにくい場所でもあって、滅多に足が向かない。
 先日、こちらの地方(一応VHF)局の番組で、その旧城下町のある1軒の和菓子屋の「わらび餅」が取り上げられ、しかも販売期間が6月末までとのことだったので、7月を目前に控えた昨日試しに買いに行ってきた。
 その店は昔ながらの佇まいで今風に明るいわけでもなく、店に入ってもまるで時が止まったかのような静けさ。奥に声をかけるとようやくお店の方が出てこられたので、肝心のわらび餅と葛饅頭、そして本当に皮の薄い薄皮饅頭をお願いした。
 ちなみにこの店のわらび餅は、通常イメージされる”スーパーで売っているわらび餅パック”とは全く違い、1つのサイズが葛饅頭と並べても遜色ない大きさで、表面はきな粉がかかっているが、中にはなんと漉し餡が入っている。
 包んで貰っている最中に、ふと「そういえばわらび餅は今月末で終了なんですよね?」と尋ねると、思いもよらぬ返事が返ってきた。「今年はこれでも遅い方なんですよ。例年だと6月までには終わりますので。元々わらび餅って春の和菓子でしてね。ほら、”わらび”って春のものじゃないですか。この時期ですと、葛とかもっと涼やかなものに移行するんです」とのこと。
 つまり、本来はわらび粉を用いて作るのがわらび餅だが、昨今安価な甘藷デンプンを主原料として作るわらび餅が増えた*1為に、結果季節感に乏しくなってしまったのが現状らしい。スーパーなどに並ぶ様を見てすっかり暑い季節の和菓子だと思いこんでいたが、思わぬところで初めて知ったトリビアだった。
参考URL:本わらび粉100gの価格(お菓子材料の店「クオカ」)
 

*1:わらび粉が仕入れ値自体かなり高価で、程々の値段で売るためには甘藷デンプンを使わざるを得ないらしい